情報BOX 【 知って得するサイバーセキュリティ講座 】
第21回マスコミ社会から口コミ社会へ
2013年7月23日
今回からは、サイバーセキュリティと企業責任についてお話していきます。
サイバースペースが現実のものとなった今、私たちは、サイバー社会という新たな社会に生きていることを、強く認識する必要があります。サイバースペースの出現によって、市民と企業の距離が近づいた今、企業もサイバー社会の一員として、利用者・消費者と誠実に向き合うことが求められます。
企業といえども利益だけを考えていればいい時代は終わりました。
企業が果たすべき社会的責任も、サイバー社会の出現によって、見直していかなければならないときが確実に来ているのです。ここでは、サイバーリスクのうちの最後の一つ、「サイバーカスケード※」について考えることから、サイバー社会での企業の社会的責任について深めてみたいと思います。
マスコミ社会から口コミ社会へ
サイバー社会では、サイバーカスケードが発生するため、企業としてそれにどんな対応をするかが課題となります。まず、「炎上(批判的なサイバーカスケード)」がどういうメカニズムで発生するかを学んでおくことが必要です。
サイバーカスケードの事例として、1999年の家電メーカーに対するクレーム事件が有名です。ある男性が家電製品の品質に対してクレームを出したところ、メーカー担当者が何度も代わったり、高圧的な態度で答えたりするといった対応が行われました。この対応に関して、男性がそのやり取りを録音し自分のホームページに公開すると、メーカーに対してインターネット上で激しい批判が起こります。
男性がホームページを閉鎖するまでに、アクセス数は1,000万を超え、ニュースで取り上げられるなど大きな反響を呼びました。最終的には、メーカーの副社長が謝罪する事態にまで至りました。
現在から振り返れば、このクレーム事件こそが、サイバースペースで起こった企業を取り巻くカスケード現象の走りであったといえるでしょう。既存の報道機関ではなく、市民のサイバースペース上での発言が、世論を形成する可能性があることを示しました。
サイバー社会では、市民間の自由な情報の交換が可能となります。それによって、企業による一方的な情報よりも、インターネットでの口コミによる意見が重視されるようになります。従来の放送型社会(マスメディアによる一方的な世論形成)で通用したビジネスや政治のあり方が、サイバー社会では通用しなくなっているのです。
ところで、サイバーカスケードで注意すべき点として、偏見や先入観が先行する場合もあり、議論の方向が必ずしも正しい方向に向くとは限らないことが挙げられます。
例えば、ある意見を持つ人同士が話をすることによって、以前に増してその意見が強化されるということが起こります。これを、「集団分極化」といいます。また、周囲がほとんど反対意見であっても、一人が意見を押し通すことで周りが沈黙し、反対意見が通ってしまうこともあります。これを、「沈黙の螺旋」と言います。
このような、「集団分極化」や「沈黙の螺旋」が起こることによって、議論が極端な方向に流れる場合があります。また、双方の意見を十分に聞かないまま、一方だけの意見が採用され、増幅される危険性もあります。 サイバースペースと関係なく、このような傾向が起こりやすい議論というものはありますが、サイバースペース上では、それが瞬時に、大規模に起こるということを認識しておかなければなりません。
※(サイバーカスケード)…サイバースペースで発生する情報の「カスケード現象」のこと。「カスケード現象」は雪崩的現象ともいわれ、一つのきっかけが連鎖反応を何度も繰り返すことで、次第に勢いを増し、最後には制御ができないほどの勢いとなるような現象のことを意味します。例えば、銀行の取り付け騒ぎや、バブルの発生や崩壊、ファッションの流行などに見られます。
◆ 次回は「批判にさらされる企業」についてお届けします。
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- 2012年3月23日 第5回 権限と脆弱性
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- 2013年7月23日 第21回 マスコミ社会から口コミ社会へ
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